蒼空のファンタジア ~プログレと幻想趣味~

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南極の日の怪奇小説

今日12月14日は南極の日。1911年、ノルウェーの探検家・アムンゼンと4人の隊員が世界で初めて南極点に到達した日。

南極といえば、木村拓哉主演で制作費20億円をかけたTBSドラマ「南極大陸」(日曜午後9:00)。視聴率が良かったのは22.2%だった第1話だけで、その後下がり続け、一方で制作費2,000万円の日本テレビドラマ「家政婦のミタ」(水曜午後10:00)の視聴率がぐんぐん上がって逆転、第8話視聴率が29.6%の大ヒットになっているという。震災後の復興に向けて「がんばろう日本」的メッセージで気合満々のドラマより、タイトルからしてパロディの、普通の日常生活に入り込んだ異分子キャラによるいわばオフビートな謎めいたドラマの方が世間には魅力的らしい。TV局でさえも先回りして"日本人"の心を読むことはむずかしい。
と、これは時事メモのようなものとして。

南極、アムンゼンといえば幻想怪奇小説ファンとして思い浮かぶ作品がある。「アムンゼンの天幕」。ジョン・マーティン・リーイというアメリカのマイナー作家による怪奇短編。経歴もよく知られていない作家の筆によるものであるが、怪奇小説愛好家の間では評価の高い作品である。「ウィアード・テールズ」誌1928年1月号に掲載され、その後いくつものアンソロジーに収録されるようになった。日本語訳は早川書房の『幻想と怪奇Ⅰ』(ハヤカワ文庫)で読むことができる。
アムンゼンが南極に残したテントの中から手記とともに発見されたある探検家の生首にまつわる恐怖譚。手記を入手した登場人物から間接的に伝えられる恐怖体験という手法は、現代映画のフェイクドキュメンタリー(架空ドキュメンタリー)にも通じ、ストーリィにリアリティを持たせ、恐怖の愉しみを高めてくれる。教養のある人間を思わせる知的にして詩情のある文体で書かれていることも効果的だ。わが国の怪談でよくある擬態語、擬声語を多用して皮膚感覚的に恐怖を高めていくテクニックとはまた違う味わいがある。そして、その恐怖を読者の想像の中で増幅させる展開の持って行き方も見事。
作品の書かれた1920年代といえば第一次世界大戦特需によってアメリカの経済が豊かになり、現代に通じる大量生産・大量消費が始まった時代。しかしまだ、秘境の地に人に知られていない驚異が存在するという話にリアリティが感じられていた時代だった。豊かになった時代の余暇に怪異譚を愉しむとき、そういう秘境は格好の舞台だった。もっとも、恐怖の源泉は外にではなく自分自身の心の中にあり、どこにいようとついてくるものであることを現代のぼくたちは知っている。科学技術や科学的考え方が世に普及しても、未知からの恐怖は駆逐されないのだ。

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(2005/02)
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閉ざされた厳寒の地に残された不可解な死体、ということではS・H・アダムズの「テーブルを前にした死骸」(『怪奇小説傑作集2』/創元推理文庫)も思い出される。それはまた違った趣向。フジテレビ・ドラマ「世にも奇妙な物語」中の「歩く死体」(1991)の原案にもなっていて、その内容を都市伝説的に知っている人も結構いるだろう。

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中井英夫「黒鳥忌」にザ・ブラックバーズ

今日12月10日は中井英夫(1922-1993)の忌日である「黒鳥忌」。そして、その日が皆既月蝕の夜と重なった。

中井英夫といえば日本探偵小説三大奇書のひとつとされるアンチ・ミステリー小説『虚無への供物』(1964/塔晶夫名義)、そして泉鏡花賞受賞作の幻想小説『悪夢の骨牌(かるた)』(1974)で知られる。特筆すべきは、短歌雑誌の編集長を勤めていたことで、葛原妙子、塚本邦雄、中城ふみ子、寺山修司ら、幻想性・前衛性の高い歌人を見出している。少しでも短歌の世界に分け入ってみたことのある人ならわかると思うが、短歌における言葉の密度、意味の多重性、常に新しい言葉の結びつきを見つけようとする繊細かつ大胆な"言葉遣い"は、散文とは次元が異なっているとしか言いようがない。その世界に携わっていた経験とセンスが、中井英夫自身の作品のそこここに伺われる。ぼくが彼の作品に強く惹かれる要因のひとつがそこにある。

中井英夫の忌日が「黒鳥忌」と呼ばれるのは、中井氏自身が自らをなぞらえていた「黒鳥館主」や「流薔園丁」「月蝕領主」に因むものである。そう、その「月蝕領主」の忌日がまさに皆既月蝕という特別な日である今日は、それにふさわしい音楽を聴きつつ、中井作品を読み返し、皆既月蝕を楽しみたい。



ザ・ブラックバーズ The Blackbirds 「Come Back」(1971)

ということで"黒鳥"のブラックバーズ The Blackbirds。マーキーの『ジャーマン・ロック集成』には取り上げられていないけれど、60年代から70年代初期のプログレッシヴなジャーマン・ロック。一時解散を経ての1971年の2ndアルバム「Touch Of Music」のラスト・ナンバー「Come Back」。クラシカルなオルガンにドタバタしたリズム・セクション、ヴァイオリンやフルートもフィーチャーしていて、同時期の英国ロックに通じる味わいがある。ところどころたどたどしかったり荒っぽかったりする展開もご愛嬌。こういう愛すべきバンドを見つけ出すのもまた、70年代プログレ趣味の愉しみだ。
 
と、ここで気づいてみると、中井英夫の言うところの黒鳥とはBlackbird(クロウタドリ、クロムクドリモドキ)でなく、Black Swan(コクチョウ)の方だった。 そこでカリフォルニア出身、サティア・サイ・マイトレーヤ・カーリー Satya Sai Maitreya Kaliの自主制作アルバム「Apache」(1971)から「Black Swan」も。グループ名にも伺われるとおりヒッピー文化らしい東洋思想の影響を受けたサイケデリックなストレンジ・フォーク・デュオ。曲想はあくまでジェントルで、英国フォークに負けず劣らずいいです、このアルバム。


Satya Sai Maitreya Kali 「Black Swan」(1971)
 
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漱石忌「夢十夜」

今日12月9日は漱石忌。1916(大正5)年、49歳で没。夏目漱石といえば明治の大文豪だが、幻想怪奇小説好きのぼくにとっては忘れることのできない名作「夢十夜」がある。日本の名作怪談アンソロジーでは必ずと言っていいほど掲載されるこの作品、1908(明治41)年7~8月の発表だから、もう百年以上前の作品ということになる。「こんな夢をみた。」という書き出しで、見た夢を十話語っていくというもので、第一夜、第三夜は特に有名。その内容についてはウィキペディアにも掲載されている。 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A2%E5%8D%81%E5%A4%9C
「夢十夜」のそれぞれのエピソードにはタイトルがついていないので、ぱっと内容を思い出せないことがある。そこで自分で勝手につけておこうと思った。ひとつのタイトルだけではわかりにくいものもあるので、次候補も挙げておく。

第一夜 死ぬ女  /百年の墓標
第二夜 悟り   /置時計
第三夜 盲目の子 /文化五年辰年
第四夜 蛇になる /唄う爺さん
第五夜 天探女  /白馬の女
第六夜 運慶   /仁王
第七夜 船旅   /黒い波の方へ
第八夜 床屋の鏡 /金魚売
第九夜 百度参り /戦争前夜
第十夜 絶壁(きりぎし)の女 /幾万匹の豚

タイトルをつけてみると、新耳袋のような怪談集っぽくなる。そういえば怪談というのは、その題名を聞いただけで想像がふくらんで怖くなる。あの「牛の首」の逸話のような。この「夢十夜」が好きな人には漱石の弟子である内田百による同じ趣向の傑作「冥途」(1922)もお薦めする。
漱石にはこの他にも「倫敦塔」、「幻影の盾」、「琴のそら音」など、漱石の短編には長編の作品とは趣の異なった幻想・神秘的な作品があり、新潮文庫「倫敦塔・幻影の盾」で読める。

【怪談ミニ知識「牛の首」】
「牛の首」という恐ろしい怪談があるが、その怖さのあまり聞いた者は数日後には死んでしまうため、「牛の首」という恐ろしい怪談があるという話しか残っていない、という怪談がある。もとは「くだん(件)」という予言をする妖怪の話から派生したもの。(「件」を分解すると人+牛。半人半牛の姿をした妖怪)
 
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The Box~運命のボタン~Old Tin Box

今日は映画『運命のボタン』(2009)をDVD鑑賞。

運命のボタン [DVD]運命のボタン [DVD]
(2010/10/22)
キャメロン・ディアス、フランク・ランジェラ 他

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主演はキャメロン・ディアスとジェームズ・マースデン。
ジェームズはあの『X-MEN』のサイクロップスの役者。

原作は怪奇小説ファンにはおなじみリチャード・マシスン(米・1926-)の
『Button, Button 死を招くボタン・ゲーム』という短編。
映画化に合わせて『運命のボタン』の邦題で短編集文庫本が出ている。

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(2010/03/26)
リチャード・マシスン

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短編を115分の映画に仕立てるので、
かなり原作を膨らませた脚本になっていると思われるが、
私の好きな「これが夢なら覚めてほしい!」タイプの悪夢映画に出来あがっていて
個人的には十分満足できる作品だった。

今回、キャメロン・ディアスは"運命のボタン"に翻弄される
悲劇のヒロインを演じている。
『チャーリーズ・エンジェル』シリーズ・ファンの私としては、
悩める母親役のキャメロンにも新鮮な魅力を感じた。

また、映画の絵作り全体が1976年という時代設定を、
その色合い、空気感から見事に表現している。
原題の技術を使いつつ、70年代の映画を再現しているような
不思議なレトロ感が、ストーリィによくマッチしている。

-★-

さて、『運命のボタン』の原題は"The Box"。

作中の鍵となる人物、アーリントン・スチュワードが語る「箱」。

「あの…ひとつお伺いしたい。なぜ、箱なんです?」
スチュワード「家は箱だろ。車は車輪がついた箱だ。通勤のために人はその箱に入る。
 人は家という箱の中でテレビという箱を見る。
 箱は心をむしばみ、肉体という箱も必ずや衰え死を迎える。
 そして最後は棺という究極の箱の中で腐敗していく」
「そう考えると気が重くなります」
スチュワード「そう考えてはいかん。この世は仮の世だと思えばいい」


「箱」が象徴しているのは現代社会の閉塞性かもしれない。

プログレッシヴ・ロックにも"Box"の曲はいろいろある。
ジェネシスの「The Musical Box 怪奇のオルゴール」とか
ピンク・フロイドの「Paintbox 絵具箱」などなど…

ここでは、グレイヴィ・トレイン Gravy Train (英)の
「Old Tin Box」(1971)を。



サックス、フルート入りのブルージィなハード・ロックともいうべきサウンドで、
プロコル・ハルムのゲイリー・ブルッカーにも通じるような
渋いしわがれたヴォーカルも印象的。
ひねった曲展開も1971年という時代を感じさせる。
B級ハードロック好きと初期アートロック風プログレ好きには
堪えられないバンドだ。
 
 
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冬の蘆江怪談集

今日は少し暖かい2月の土曜日。
1週間前に引いてしまった風邪がどうも治りきらなくて
寝込むほどでもないのだけど、
すっきりとしないもやもやしたものが喉の奥にある。

そんな昨夜、9時前には横になって
『蘆江怪談集』を読んでいた。

昭和初期の文筆家・平山蘆江(ひらやまろこう)が
昭和9(1934)年に出版した怪異幻想譚集を底本に
ウェッジ社が2009年に文庫化したもの。

21世紀の今になっても、昭和の前中期の
いわゆる「レトロ」なイメージが
不思議と広く人々の心をとらえ、親しまれている。
この『蘆江怪談集』の文庫化もそういった
時代の流れの中で実現したものなのだろう。
それにしても、出版界に好事家の人がいればこその
世間一般の目で見ればなかりマイナーな企画で、
怪奇幻想文学ファンとしてはとてもありがたいことだ。

四季という豊かな自然の循環に恵まれながら
そこかしこに蔭りや湿度感を感じる日本と言う風土。
そういう日本の空気を改めて実感させるものが
『蘆江怪談集』のような名作怪談の中にこそ強くあると思う。

現代と完全に隔絶したほどの過去というわけでもなく、
すでに近代化の進む大正~昭和初期という時代感もいい。
(何作かは江戸時代の設定になっている)

風邪を引いた冬の日に読む怪談。
装丁は和田 誠氏。
解説はアンソロジストの東 雅夫氏。

蘆江怪談集 (ウェッジ文庫)蘆江怪談集 (ウェッジ文庫)
(2009/10/20)
平山 蘆江

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収録作
「お岩伊右衛門」(タイトルどおり、四谷怪談の翻案作)
「空家さがし」
「怪談青眉毛」 
「二十六夜待」
「火焔つつじ」(和田誠監督映画『怖がる人々』の中で映画化されている)
「鈴鹿峠の雨」
「天上の怪」
「悪業地蔵」
「縛られ塚」
「うら二階」
「投げ丁半」
「大島怪談」
「怪異雑記」(あとがきとしての随筆)


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